レムリア大陸

レムリア大陸とムー大陸：伝説と実在の謎に迫る

レムリア大陸とムー大陸とは、かつて存在したとされる幻の大陸の名前です。レムリア大陸はインド洋に、ムー大陸は太平洋にあったと言われていますが、その実在は科学的に否定されています。

しかし、それらの大陸には様々な伝説や神秘がまつわり、多くの人々の想像力をかきたててきました。この記事では、レムリア大陸とムー大陸の歴史と伝説、そして実在の可能性や謎について、詳しく紹介していきます。

レムリア大陸の歴史と伝説

レムリア大陸という名前は、1874年にイギリスの動物学者フィリップ・スクレーターが提唱した仮説に由来します。スクレーターは、アフリカのマダガスカル島に生息するキツネザルという動物が、インドや東南アジアにも近縁種がいることに注目しました。

このようにインド洋を隔てた地域に同じ種類の動物が分布することを説明するために、スクレーターは、かつてインド洋にインドの南部、マダガスカル島、マレー半島がつながっていた大陸が存在したのではないかと考えました。

この大陸にはキツネザル（レムール、Lemur）が住んでいたとして、レムリア大陸と名付けました。

レムリア大陸の存在を支持したのは、ドイツの動物学者エルンスト・ヘッケルでした。ヘッケルは、自著『自然創造史』で、レムリア大陸こそが人類発祥の地であると主張しました。

ヘッケルは、人類の祖先はレムリア大陸で進化し、そこからアフリカやアジアに分散したと考えました。ヘッケルの説は、当時の人類学や進化論に影響を与えました。

しかし、レムリア大陸の存在は、1912年に気象学者アルフレート・ヴェーゲナーが提唱した大陸移動説によっても説明できることがわかりました。ヴェーゲナーは、かつて地球上の大陸は一つにつながっていたが、その後に分裂して現在の位置に移動したと考えました。

この説は、大陸の形や地質、化石などの証拠によって支持されました。1950年代には、プレートテクトニクス理論が完成し、大陸移動説の正しさが確認されました。これにより、レムリア大陸の仮説は科学的に否定されました。

しかし、レムリア大陸は、オカルトや神秘学の分野で別の意味を持つようになりました。1888年に神智学協会の創設者の一人、ブラヴァツキー夫人が刊行した著書『シークレット・ドクトリン』において、レムリア大陸が登場しました。

ブラヴァツキー夫人は、レムリア大陸は太平洋にあったと主張し、そこに住んでいたレムリア人は第三の人類根源種であるとしました。レムリア人は、身体的には巨大で、精神的には未発達で、性別の区別もなく、卵生であったとされます。

レムリア人は、火山の噴火や地震によってレムリア大陸が沈没するときに、ほとんどが死滅しましたが、一部は生き残ってアトランティス大陸に移住し、第四の人類根源種であるアトランティス人に進化したとされます。

ブラヴァツキー夫人の説は、神智学やオカルトの分野で広く受け入れられました。レムリア大陸は、高度な霊性や叡智を持つ大陸として描かれるようになりました。

また、レムリア大陸とムー大陸という別の大陸を同一視する説も出ました。ムー大陸は、1862年にフランスの聖職者シャルル・ブラッスール・ド・ブルブールが、マヤの絵文書を翻訳したときに発見したとされる大陸です。

ブラッスールは、ムー大陸は太平洋にあったと主張しましたが、その翻訳は後に誤りであることがわかりました。しかし、ムー大陸の伝説は、アメリカの作家ジェームズ・チャーチワードによってさらに発展しました。

チャーチワードは、ムー大陸はレムリア大陸の別名であり、そこには白人が支配する超古代文明が栄えていたと主張しました。チャーチワードの説は、科学的にも歴史的にも根拠がないことが明らかになりましたが、ムー大陸はレムリア大陸とともにオカルトやニューエイジの分野で人気を博しました。

レムリア大陸とムー大陸は、科学的には存在しなかったとされていますが、それでもなお、その実在の可能性や謎に興味を持つ人々は少なくありません。レムリア大陸とムー大陸に関する様々な仮説や推測がなされていますが、ここではその一部を紹介します。

レムリア大陸は、インド洋にあったとされるが、その位置は必ずしも一定ではない。レムリア大陸の位置を示す地図は、様々なバージョンが存在する。一般的には、レムリア大陸は、インドの南部からマダガスカル島、オーストラリア、ニュージーランドにかけて広がっていたとされる。

しかし、レムリア大陸の位置を太平洋に移したり、アフリカや南極にも拡大したりする説もある。レムリア大陸の位置は、その起源や目的によって異なると考えられる。

ムー大陸は、太平洋にあったとされるが、その形や大きさは不明である。ムー大陸の形を示す地図は、チャーチワードの著書に基づいて作られたものが多いが、その正確さは疑わしい。

チャーチワードは、ムー大陸は太平洋のほぼ全域を覆っていたと主張したが、その証拠として挙げた絵文書や石板は、後に偽物であることが判明した。ムー大陸の形は、その発見者や信奉者の想像力によって変化すると考えられる。
レムリア大陸とムー大陸の実在の可能性は、科学的にはほとんどないとされる。レムリア大陸とムー大陸の存在を裏付ける地質学的や考古学的な証拠は見つかっていない。

また、レムリア大陸とムー大陸の沈没の原因とされる火山や地震の規模や頻度は、現実的ではないとされる。レムリア大陸とムー大陸の実在の可能性は、その伝説や神秘に魅了される人々の願望によって支えられると考えられる。