高齢者と障害者の

買い物難民

高齢者と障害者の買い物難民問題：解決策と支援の方法

日本は世界でも有数の高齢化社会です。2020年の国勢調査によると、65歳以上の人口は約3,600万人で、全人口の約28.7％を占めています。また、障害者の人口は2016年の調査で約960万人で、全人口の約7.6％に相当します。

高齢者や障害者は、健康や移動能力の低下などにより、日常生活においてさまざまな困難に直面しています。その中でも、特に深刻な問題の一つが「買い物難民」です。

「買い物難民」とは、生活必需品や食料品を購入するための店舗が近隣に存在せず、買い物に困難を感じる人々を指す言葉です。この問題は、都市部と地方部で若干異なる原因によって引き起こされています。

都市部では、大型店舗やショッピングモールの出現により、中小の小売店が廃業し、特に高齢者などが生活必需品を購入するための店舗が近隣に存在しなくなっていることが原因として挙げられます。

地方部では、人口減少や過疎化により、地域内の小売店が減少・廃業し、特に過疎地域では、店舗までの距離が遠くなることが原因として挙げられています。

買い物難民は、食事や健康、生活の質などに大きな影響を及ぼします。食料品が手に入らず、魚や肉類などの摂取が不足すると、栄養不足やサルコペニア（筋肉量の減少）などのリスクが高まります。

また、買い物をする機会が減ることで、外出や社会参加が減り、孤立やうつ傾向などの精神的な問題も発生しやすくなります。

このように、買い物難民は高齢者や障害者だけでなく、社会全体にとっても重要な課題です。

本記事では、買い物難民の現状とその背景にある問題点を深掘りし、解決策や支援の方法を考えてみます。

買い物難民の現状

買い物難民の数

買い物難民については統一的な定義はありませんが、農林水産政策研究所は類似した言葉として「食料品アクセス困難人口」という言葉を使い定義し、この問題について分析を行っています。

食料品アクセス困難人口とは、「店舗まで500m以上かつ自動車利用困難な65歳以上高齢者」を指します。店舗は、「食肉・鮮魚・野菜・果実小売業、百貨店、総合スーパー、食料品スーパー、コンビニエンスストア」が含まれます。

この定義に基づいて、農林水産政策研究所は国勢調査や商業統計などのデータを用いて、食料品アクセス困難人口の推計値を算出しています。その結果、2015年時点で全国に約824万人の食料品アクセス困難者がいると推計されています。

食料品アクセス困難人口の推計値は、地域や年代によって大きく異なります。地域別では、北海道や東北地方などの人口密度の低い地域や、九州・沖縄地方などの高齢化率の高い地域で多く見られます。

年代別では、75歳以上の高齢者が全体の約7割を占めています。

買い物難民への支援策

買い物難民への支援策は、国や地方自治体、民間企業や団体などが様々な形で行っています。ここでは、主な支援策の例を紹介します。

国や地方自治体による支援策

国や地方自治体は、買い物難民への支援策として、以下のような取り組みを行っています。

商業施設の維持や新たな開設
- 国は「商業活性化法」に基づき、商業施設の整備や改善に対する補助金制度を設けています。
- 地方自治体は「買物弱者対策関連事業予算」を組んで、商業施設の建設や改修などに助成しています。
移動販売の支援
- 国は「移動販売振興法」に基づき、移動販売車の導入や運営に対する補助金制度を設けています。
- 地方自治体は「移動販売事業者登録制度」を設けて、移動販売車の運行ルートや時間帯などを調整しています。
交通手段の確保
- 国は「交通弱者対策推進法」に基づき、交通弱者（交通手段が不十分で移動に困難を感じる人々）への支援策を推進しています。
- 地方自治体は「コミュニティバス」や「デマンドバス」などの公共交通サービスを運営しています。
買い物支援サービスの提供
- 国は「介護保険法」に基づき、要介護状態にある高齢者に対して、「訪問介護サービス」や「生活援助サービス」などの買い物支援サービスを提供しています。
- 地方自治体は「高齢者生活支援事業」や「障害者生活支援事業」などで、高齢者や障害者に対して、買い物支援サービスを提供しています。

民間企業や団体による支援策

民間企業や団体は、買い物難民への支援策として、以下のような取り組みを行っています。

ネットスーパーや宅配サービスの提供
- ネットスーパーは、インターネットや電話で注文した食料品や生活必需品を自宅まで配達するサービスです。
- 宅配サービスは、食事や弁当、惣菜などを自宅まで配達するサービスです。
- これらのサービスは、店舗までの距離や移動能力が問題となる買い物難民にとって、便利な選択肢となります。
- 例えば、イオンや西友などの大手スーパーは、ネットスーパーのサービスを展開しています。また、ヨシケイやオイシックスなどの食材宅配サービスも人気があります。
シェアリングエコノミーやボランティアの活用
- シェアリングエコノミーとは、個人間で物やサービスを共有する仕組みです。
- ボランティアとは、無償で社会的な活動に参加することです。
- これらの取り組みは、買い物難民に対して、人的な支援やコミュニティの形成を促します。
- 例えば、タイムバンクというサービスは、時間を通貨として交換するシェアリングエコノミーの一種です。
  
  このサービスでは、買い物代行や食事作りなどの支援を受けたい人と、時間を提供したい人とをマッチングします。
  
  また、シルバー人材センターやNPO法人なども、高齢者や障害者の買い物支援に関わるボランティア活動を行っています。

買い物難民問題の解決に向けて

買い物難民問題は、高齢者や障害者だけでなく、社会全体にとっても重要な課題です。この問題を解決するためには、国や地方自治体、民間企業や団体などが連携し、多様なニーズに応えることが必要です。

また、買い物難民への支援策は、単に物質的な面だけでなく、精神的な面や生活の質の向上も目指すべきです。買い物難民は、食事や健康だけでなく、外出や社会参加も減ることで孤立やうつ傾向に陥りやすいです。

そのため、買い物支援サービスは、単に商品を届けるだけでなく、コミュニケーションや相談も行うことが望ましいです。

さらに、買い物難民問題は今後も深刻化する可能性があります。日本は高齢化社会が進み続け、2030年には65歳以上の人口が全人口の約30％に達すると予測されています。

また、新型コロナウイルスの感染拡大により、外出自粛や非接触化が求められる中で、買い物難民の増加や支援策の変化も考えられます。

このように、買い物難民問題は、現在だけでなく、未来に向けても重要なテーマです。私たちは、この問題に対して、関心を持ち、情報を収集し、行動を起こすことが求められます。

まとめ

本記事では、買い物難民問題について、以下の点を紹介しました。

買い物難民とは、生活必需品や食料品を購入するための店舗が近隣に存在せず、買い物に困難を感じる人々を指す言葉です。
買い物難民は、食事や健康、生活の質などに大きな影響を及ぼします。
買い物難民の数は、2015年時点で全国に約824万人いると推計されています。
買い物難民への支援策は、国や地方自治体、民間企業や団体などが様々な形で行っています。
買い物難民問題は、高齢者や障害者だけでなく、社会全体にとっても重要な課題です。この問題を解決するためには、多様なニーズに応えることが必要です。

買い物難民問題は、私たち一人一人にとっても身近な問題です。私たちは、この問題に目を向けることで、自分や周りの人々の生活をより良くすることができます。買い物難民問題に関心を持ちましょう。

【参考文献】

(1) 買い物難民とは買い物弱者の現状・支援とビジネス的な解決策 .... https://carenote.jp/kaimononanmin/.
(2) 買物弱者対策支援について（METI/経済産業省）. https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/kaimonojakusyashien.html.
(3) 広がり、増え続ける買い物難民、高齢者にとってはフード .... https://kyodo-portal.city.osaka.jp/task/24000005356/.
(4) 食品アクセス（買い物弱者・買い物難民等）問題ポータル .... https://www.maff.go.jp/j/shokusan/eat/syoku_akusesu.html.
(5) 過疎地域の抱える課題「買い物難民」。ケアマネができる対策 .... https://www.minnanokaigo.com/news/kaigo-text/care-manager/no72/.

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