我が秘密のブログ編

できれば1日1記事以上!!思い立ったことを書きます!!

ロバーズChapter6 : アイスブレイク

アイキャッチ

アイキャッチ

 

Chapter6 : アイスブレイク

 

悲壮な喘ぎ声が、暗闇に満ちた空間を震わせる。音源はタイチであった...毒を飲まされ、絶命へと向かっていたはずが、因果は彼を浮き世に留まらせたようだ。

 

理解不能な状況にもかかわらず、彼の体は生きるための反応を示していた。

 

身体が激しく揺れる中、タイチは強制的に目を覚ます。その視界はまだ曖昧で、彼の意識は激しい吐き気と咳に苦しめられていた。それでも彼は抗う、生き続けるために。

 

その痛みと戦いながら、タイチはついに立ち上がることができた。しかし、彼の横には残虐な行為を繰り返していたあの人々の姿はなかった。彼らがいなくなった理由など、彼には分からなかった。

 

彼が知っているのは、彼がまだ生きているという事実だけだった。「中々、死ねねぇな...全く…クソ...」彼の口から漏れる皮肉たっぷりの声。

 

死に瀕していた筈の彼、なぜか生き返ってしまった。その事実に、彼自身が驚き、同時に軽蔑を覚えていた。

 

生きているという現実を受け入れたタイチは、再び立ち上がる。

 

毒を飲まされた影響で体力は大幅に奪われていたが、彼の意志は決して揺らぐことなく、生き延びるための意識が彼を前に進ませた。

 

彼の身体はまだ激しく揺れていたが、その中には新たな決意が芽生えていた。彼は死の淵から生還し、これから何が待ち構えているのかを探し求める。

 

タイチは重たい腕を上げ、不確かな未来へと一歩を踏み出した。その時、彼の中にあった脆弱さは消え去り、代わりに生きるための強さが湧き上がってきた。

 

彼の意識はまだぼんやりとしていたが、その中にあるのは一つだけの確固とした決意だけだった。それは、生き続けるという決意だ。

 

生ける屍の如く立ち上がり、一歩を踏み出した彼の姿は、残虐な行為を行っていた人々に対する、明確な挑戦の証だった。

 

夜の静寂を切り裂くような悲鳴。それを聞きつけたタイチは外へと足を踏み出す。周囲に広がるのは、暗闇と無慈悲な現実だけだった。

 

---

 

「ぁ...ぁ...タスケテ...」

 

女性がよだれを垂らした暴徒に襲われそうになっている。その状況を目の当たりにしたタイチの心中に、悲しみと呆れ、そして歪な決意が生まれた。

 

"俺はずっと考えてたことがあった、ガキの頃からずっとだ"

 

"何で人を傷つけたり、人をぶっ殺しちゃいけねぇのか?"

 

彼の心の中で響き渡る疑問。その言葉は彼自身の内面に突き刺さる。

 

"俺や俺達は...人を悲しませたりだとか、罪悪感に締め付けられて生きていけなくなってしまうからだって大人やメディアに教えられた"

 

しかし、その教えを真剣に受け止めていたタイチが見たものは、その教えとはかけ離れた残酷な現実だった。

 

"でも、違ったぜ。本当は...人を傷つける快楽・味ってやつを知ってしまうから...それが凄く気持ち良くて...最も効率的に物事を解決できちまうって...分かっちまうからだよな..."

 

その言葉を紡ぎながら、タイチは手にした砂を強く握りしめ、暴徒に向かって放った。

 

砂が暴徒の顔に当たると、彼は悲鳴をあげて手で目を覆った。その隙をついて、タイチは暴徒の首に力強く二回拳を叩き込み、彼を昏倒させた。

 

「まぁ、そこまではしないけどな」

 

その言葉を、タイチはあたかも普通の会話のように口にした。震えて声も出せない女性に向かって、彼は更に言葉を続けた。

 

「早く逃げな、お前の身を守れるほど余裕はねぇんだ」

 

その言葉は冷たく、しかし確かな意志を持っていた。彼は自身を守るために戦い、女性を救うために戦った。彼の強さは、生き抜くための決意から生まれたものだった。

 

そんな彼の姿を見て、女性は混乱しながらもその場を逃げ出した。そして、タイチは再び暗闇に飲まれ光の消えた外の世界へと進んでいった。

 

彼の目の前には続く闘争、そして何より自身の生存が待ち構えていた。

 

道端には、血に塗れた遺体や、泣き叫ぶ人々の声が響き渡る。しかし、タイチの目に映るのは、その苦痛の中にもひたむきに生き抜こうとする人々の姿だった。それらを見て、彼は自身が何のために存在するのかを確信する。

 

彼は破壊された街をゆっくりと進む。足元に感じる確かな地面と、頭上に広がる無情な闇。それらが彼に、現実と向き合う決意を新たにさせた。

 

突如として、彼の前に現れたのは、暴徒の群れだった。彼らの目は狂気に満ち、手には武器を握りしめている。彼らはタイチを見るなり、一斉に彼に襲い掛かった。

 

しかし、タイチは動じなかった。彼の体は闘争に慣れ、瞬時に暴徒の一人の腕をつかみ、持っていた棒を奪った。

 

「何すんだよ...いきなり...全く...こちとらデビュー戦だってのにロクな目に遭やしねぇなァ」

 

タイチの言葉が闇に吸い込まれ、遺体が散乱する路地に響き渡る。彼の視線は剥き出しの残虐性を孕んだ暴徒たちに向けられ、彼の手に握られた棒が彼らに対する唯一の警告だった。

タイチの言葉が闇に吸い込まれ、遺体が散乱する路地に響き渡る。彼の視線は剥き出しの残虐性を孕んだ暴徒たちに向けられ、彼の手に握られた棒が彼らに対する唯一の警告だった。

 

 

「…かかってきな」彼の言葉は軽蔑と飽き飽きした表情にあふれ、タイチは棒を暴徒に向けて振り上げる。

 

タイチの動きは一瞬で、暴徒たちが反応する前に、彼は既に棒を振り下ろしていた。暴徒の一人が地面に倒れ込むと、他の者たちは怯んで後退した。

 

だが、タイチは彼らに容赦なく追い詰める。彼の攻撃は容赦なく、狂気的なまでに精確だった。暴徒たちはタイチの前に次々と倒れていった。

 

結果として、タイチは独り立ち続けた。彼の周りには昏倒した暴徒たちが横たわり、その中にはタイチの攻撃を受けて重症を負った者もいた。

 

しかし、タイチの顔には何の感情も浮かんでいなかった。それどころか、彼は再び周囲を見渡し、新たな敵を探し始めた。

 

彼の目には狂気と闘争の痕跡が混じり合い、その中には生き残るための冷徹さが滲んでいた。

 

「強がっては...みたものだがな....」彼の唇から溢れる言葉は、彼自身の生存への執着と己自身の虚しさを如実に表していた。

 

彼の目には次なる戦いへの覚悟があり、彼の手にはその証明としての棒が握られていた。

 

そして、タイチは再び歩き始めた。彼の目指す先に何があるのか、それを知る者は誰もいない。

 

しかし、彼は自身の道を進み続け、彼の周りには彼自身の戦いの痕跡が残されていく。

 

明け方の街角で、タイチの耳に異様な歓声と怒号が飛び交う音が届いた。眼前に広がっていたのは、残虐な戦闘の光景だった。

 

天皇陛下万歳!!! 汚らわしき売国奴を皆殺しにせよ!!!」

 

強硬な右翼の男たちが、激情に身を任せ、声を上げていた。彼らの体には日本国旗のバンダナが巻かれ、手には自衛のための武器が握られていた。

 

一方で、彼らとは対照的な思想を持つ左翼の集団は...

 

「この世界に多様性を!!!! 我らを虐げるレイシストどもを滅却せよ!!!!」

 

と声をあげていた。彼らは虹色のバンダナを身につけ、自己表現の手段としてのプラカードを振り上げていた。

 

二つの思想がぶつかり合い、それぞれが持つ信念を声高に叫び合いながら、無秩序な乱闘が繰り広げられていた。意見の違いから生じる敵意が、激しい殺し合いを引き起こしていた。

 

その場にいる全員が一切の譲歩を許さず、自分たちの信念を最後まで守ろうとしていた。

 

壊れたガラスや飛び散る血しぶき、崩れ落ちた建物の瓦礫が道路に散乱し、それぞれが持つ信念の深さを物語っていた。

 

タイチはその光景を冷静な目で見つめながら、これが彼の生きていく世界だという事実を改めて実感した。「人間ってのは、なんでこんなにも他人を理解するのが難しいんだろうな...」

 

彼の内心には、他人の感情や信念を理解し、共感することの難しさと、それによって引き起こされる悲劇に対する疑問が浮かんでいた。

 

建物の影から、タイチはこの壮絶な乱闘を見つめていた。右翼と左翼の間では、誰が正しいとか誰が間違っているということなど意味をなさない。

 

それぞれの人々は、自分たちの信念を守り、またそれを拡散させることが全てだった。

 

右翼の一部は、鬼神の如く攻撃を仕掛ける。彼らの動きは矛盾するように見えたが、それは猛獣の本能に従ったものだった。

 

遠慮なく飛びかかり、敵の頭を振り回した鉄の棒で叩きつける。その攻撃は、生々しい音を立てながら敵の体に突き刺さった。

 

一方、左翼の一部は、まるで猛禽類のように空から敵を襲った。彼らは高層ビルの上から飛び降り、矢のように敵の頭を打ち抜いた。

 

彼らの攻撃は、光の速さで敵の体に穴を開け、街路に血の雨を降らせた。

 

武器の一つ一つが、無数の火花を散らす。その光は、闇夜を切り裂き、人々の激情を照らし出す。それは、まるで地獄の風景のようだった。

 

さらに激化する戦闘。彼らが殴り合い、蹴り合い、そして命を奪い合うその光景は、まさに「闘争」そのものだった。

 

その場で何が起きているのか理解できない人々が、周囲を恐怖に揺さぶられながら逃げ惑う。彼らの恐怖と混乱が、乱闘の激しさを更に際立たせた。

 

それでも、乱闘は続く。街路が血で染まり、倒れていく人々の間で、未だ戦闘は終わる気配を見せなかった。

 

それぞれの立場からすれば、彼らは自分たちの信念を全力で守り抜いている。これが彼らの信念に対する最大の献身であり、敬意だった。

 

タイチは闘争の真ん中に立ち、何をすべきかを考えた。彼はただ一人、彼自身の信念を問うことができた。

 

血と金属の匂いが広がる混乱の中で、タイチの視線は一人の震える野次馬に移った。男はかつての安全な日常から引き裂かれ、今、恐怖と混乱に晒されていた。

 

彼の目は、すべてが壊れてしまった世界に対する理解不能と絶望で霞んでいた。

 

タイチは彼に近づいた。足元を血の溜まった瓦礫に気をつけながら、彼は男のところへと歩みを進めた。

 

「おい、お前」彼の声は男をびっくりさせ、彼は小さく体を震わせた。

 

タイチはさらに近づき、彼の質問を投げかけた。「今、この社会の状況で金銭は機能してんのか?」

 

タイチの声は冷静であったが、その背後には深刻な疑問が含まれていた。それは、この壊れた世界で生き残るための彼自身の戦略を見つけるための質問だった。

 

男は一瞬戸惑ったが、すぐに首を振った。「だ、だから何だよ!?」彼の声は怒りと恐怖で震えていた。でもその中には、答えが見えていた。

 

「この国に金銭なんてものは…もはや何の価値もない。誰もが生き残ろうとしていて…金なんて意味がない。食べ物、水、武器それらを皆が奪い合い殺し合ってる、それが今の日本で一番価値のあるものだからだよ...」彼の声は弱々しかったが、その言葉はタイチにとって有用な情報だった。

 

「そうか。ありがとな。」タイチは男に軽く頭を下げた。彼の言葉には感謝の意味が込められていた。その後、タイチは再び混乱した街へと視線を戻した。

 

彼が見ているものは、自分自身の生存への道だった。そして、そのためには今必要なものが何であるかを見極める必要があった。

 

---

 

 

「ブレイン、日本の金融機関に対するクラッキングには成功したようだな。」

 

ブレイン・コンフューザーは自信たっぷりにうなずいた。「ああ、すべては計画通りだ。全ての機能は停止していないにせよ、今や金銭で誰も取引をしてはいない。軽い副業だった。実働部隊の働きもとても助かったよ。」

 

「上出来だ。」ネームレスの口元に満足そうな笑みが浮かんだ。「次のステップに進む準備はできているのか?」


ブレインは再びうなずき、その表情からは決意が滲み出ていた。「もちろんだ。君に任せられた、本業の国会をダウンさせるのも完了させてきたよ、フフフ...まさか、あのお偉いさん方もSPに銃を向けられるとは思っても見なかっただろうしね」

 

ネームレスの笑みは一層深まった。彼の目はクリスタルのように冷たく、ブレインをじっと見つめていた。「フフフフフフ...次のステップは…国家の混乱を最大にすることだ。」

 

ブレインは軽く首を傾げた。「それにはどのような手段を使うつもりだ?」

 

ネームレスの笑顔が一瞬、凍るように硬くなった。「それは…少し違った方法だ。我々は国家を混乱させるだけではなく、根本から破壊し、新しい秩序を築くつもりだ。」

 

ブレインはネームレスの目を見つめ返し、片眉を上げた。「新しい秩序?それがどのようなものであれ、国家の混乱を利用して作り上げるなんて、大変そうだな。」

 

ネームレスはゆっくりと頷き、「確かに大変だ。しかし、それが我々の目的だ。今の秩序を壊し、新しいものを創造する。それが可能なのは、我々だけだ。」

 

ブレインは少し考え込んだ後、再びネームレスを見つめて言った。「それなら、僕も全力で協力しよう。しかし、その新しい秩序がどのようなものか、少しは教えてくれ。」

 

ネームレスの唇から再び冷たい笑みがこぼれ、「それは…計画が成功した時にだけ明らかになるだろう。やがてお前も己自身のために戦う時が来るだろう...」と、ただ言っただけであった。

 

---

 

破れかけた暖簾を掠めながら、タイチは飯屋の店内に足を踏み入れた。店の奥から男たちのうがった視線が飛び交い、一人の粗野な男が立ち上がり、目を光らせながら彼に迫った。

 

「おぅおう....!!!ここが我らが右翼団体御用達の店ってのが分かんねぇか? 一見さんはお断りってなァ!!!」

 

男の言葉に店内がざわついたが、タイチはまったく動じなかった。彼の手がポケットに滑り込んだ。

 

「金ならあるぜ...よく手を見てみな...」

 

男はタイチの手に目を向け、その瞬間、タイチの手が速く動き、驚愕のあまり口を開けた男の鼻に硬く打ち込まれた。一瞬で男は後ろに倒れ、店内は再びざわついた。

男はタイチの手に目を向け、その瞬間、タイチの手が速く動き、驚愕のあまり口を開けた男の鼻に硬く打ち込まれた。一瞬で男は後ろに倒れ、店内は再びざわついた。



 

「うぅ...鼻...鼻が...」店内からは男の苦痛に満ちた声と共に驚きと混乱の波が広がった。

 

タイチは店内の人々に向かって声を上げた。

 

「そいえば団体が何だって言ってたな。日本がこうなっちまう前、みんなは組織ってのを勘違いして解釈していた...皆、集団で集まってれば、俺達は強い!! だってひとりじゃないんだから!!! 俺はみんなは強いんだ!!! って少しでも思ってたんじゃないか??」

 

彼の言葉は店内に響き渡り、一瞬の静寂が広がった。彼は鋭い視線をそのままに、再び口を開いた。

 

「ふざけんじゃねぇよ!!!! 組織・集団ってのはな、一人一人が強くて初めて機能するもんなんだ。パワハラだぁ?セクハラだぁ!?自分からは何もせず、人に頼ってばかりで、何かと問われれば人のせいにする。そんな日本人の風下にも置けないクズ共がなァ!!!組織だなんてほざいてんじゃねぇよ....!!!チンカス魚臭野郎共がよォ!!!!」

 

言葉が尽きたとき、店内は再び静まり返った。みんながタイチを見つめている中、へし折られた鼻の店員がゆっくりと立ち上がった。

 

「おぅ...良い度胸じゃねぇか...!!!」店員はタイチに向かって指をさしながら言った。「俺達が言いたかった事を代弁してくれたもんだぜ!!!これこそが愛国者ってモンだなァ!!!らっしゃい!!!1名様席にどうぞ!!!」

 

タイチの存在は、一瞬で飯屋の雰囲気を変えた。それは恐怖や敵意ではなく、ある種の共感と尊敬に満ちていた。タイチはただ、黙って指示された席に向かった。

 

タイチが席につくと、店員は彼の前に適当な料理を置いた。カウンターから立ち上る蒸気と揺れる焼き魚の香りが彼の鼻をくすぐった。彼は箸をつかんで一口食べ、料理の味に目を細めた。

 

「おぅ、これはうまいな...」彼は満足そうに言った。「ただ、飯よりもっと大事なものが知りたいんだ。」彼は店員に向かって話を続けた。「ここで何が起きてるんだ?右翼と左翼の間で。」

 

店員は横からタイチを見つめ、驚きと戸惑いが混ざった表情で彼を見た。そして、彼はゆっくりと頷き、深いため息をつきながら話し始めた。

 

「それはなぁ...長い話だよ。でも、お前のような度胸のある男には伝えるべきだろうな...」

 

店員は酒を一杯ついで、話し始めた。

 

「1週間前だな、裁判所での無差別殺傷テロが起きたんだ。それが発端だった。まもなく、その主犯と思われる人物がSNSに本当の正義とは...という長文のポエムのような演説文をアップしたんだ。それがたちまち拡散して、インフルエンサーが取り上げて、何と...世界トレンドにまで上がっちまったぐらいさ。そこからだ...この国がおかしくなっちまったのは。」

 

店員は一口酒を飲んで、話を続けた。

 

「俺たち宛にも何者かが匿名で、"売国奴達が痰を吐きながら押し寄せて来る、戦いに備えろ"ってメッセージが来たんだ。はじめは何かのイタズラかと思ってたけど、その後、日本中で同時多発テロが発生し始めて、俺たちはこれは売国奴の野郎共の仕業に違いないと思ったんだ。だから、俺たちは奮起した。」

 

店員は再び酒を飲み、一息ついた。「それからだ、左翼のキムチ野郎共が、俺たちレイシスト共のせいでこんなパニックになっているとか言ってきやがった。それを聞いて、もう堪忍袋の緒が切れたんだよ。そっからこの戦争が始まったんだ...。」

 

店員の声が途切れると、店内は静まり返った。一瞬の沈黙の後、タイチはため息をついて、店員の目を見つめた。

 

店員はタイチをじっと見つめた後、深呼吸をした。「だがよ...俺たちはこの戦争を今は終わらせるわけにはいかねェ...理由はどうであれ、あの左翼のクソッタレ共をぶっ潰せる良い機会ってヤツだ。あいつらがこの国から消えるまで俺たちは戦い続けるだけだぜ...」

 

店員はゆっくりと立ち上がり、タイチの方を向いた。

 

「そこでオメェに頼みてェ...仕事ってヤツがあるんだ。」彼の目は深刻さと期待で満ちていた。

 

しかし、タイチは淡々とした表情で答えた。「仕事っつても金銭の価値は今はねぇんだぞ?」

 

店員は苦笑しながら頷いた。「ああ、その通りだ。でもな、金じゃない。俺たちのリスペクトってヤツさ。お前が困った時、何か力になれることがあるなら、俺達がお前の味方になってやるって約束だ。」

 

言葉の後には、店員の真剣な視線がタイチを貫いていた。それはただの飯屋の店員から出るものではなく、彼が代表する団体全体からの重圧とも言える約束だった。

 

店員は深く息を吸い込んでから、じっくりとタイチに仕事の内容を話し始めた。

 

「簡単に言やァ、あの左翼のクソッタレ共の中に潜伏して欲しいんだ。」店員の口調は一層硬くなり、その瞳には深刻な状況を打開しようとする決意が滲んでいた。

 

「正直あいつらが何を考えてるのか、何が目的なのかさっぱり分かんねぇんだ。」

 

彼はぎゅっと拳を握り、テーブルを叩いた。「今じゃ、あいつらとの戦争で兵力も少なくてカツカツなんだよ。信頼できて、頼れるヤツがいねぇ...だから、ここでテメェに頼むしかねぇんだ。」

 

店員は息をつき、タイチの目をじっと見つめた。「オメェは少なくともどの思想にも染まってねぇってツラをしてやがる。それが逆に良いんだよ。お前があいつらに対して中立的な姿勢を保つことができるなら、そこでモグラとして奴らの中に潜り込んで欲しいんだ。」

 

彼は酒を飲み干し、グラスをテーブルに置いた。「奴らの計画、目的、動向、全てを監視して情報をこっちに提供するんだ。お前がそれをやれば、俺たちは戦況を有利に進めることができる。」

 

店員は目の前のタイチに訴えかけるように言った。「お前がそのモグラになってくれれば、この戦争を一日でも早く終わらせることができるんだ。それがお前に頼みたい仕事だぜ」

 

タイチは深く息を吸い、店員を見つめた。

 

「わかった。だが、これは俺とお前のビジネスだ。リスクを冒すのは俺だが、最低限のサポートは期待するぞ。」タイチの言葉に、店員は頷いた。

 

「おう、それは当然だ。お前が情報を持ってきてくれれば、その分、こっちも力になる。そういうパートナーシップだろう。」店員は大きく息を吸って言った。

 

「それに、言葉だけじゃない。具体的なサポートも提供する。通信手段、潜入のための装備、情報収集のための訓練...必要なものは何でも用意する。」彼はゆっくりと口を閉じ、タイチの反応を待った。

 

タイチは深呼吸をし、再度店員を見つめた。「それなら、パートナーシップを組むべきだな。お前の提案、受けるよ。」

 

二人の間に流れる空気は、もはやただの友情を超え、互いに信頼と責任を持つビジネスパートナーとしての確固たる絆を感じさせた。そして、それは彼らがこれから立ち向かう困難な戦争において、絶対に必要な力となることだろう。

 

---

 

左の翼なる拠点は...国が崩壊した今、狂気のパラダイスのようだった。

 

異なる思想、価値観、目指す未来が混沌と混ざり合い、一種のカオスが渦巻いていた。そこでは、皮肉にも多様性が最大限に尊重されているように見えた。しかし、その多様性は一方で、彼らが共に進むべき道を見失わせていることの象徴でもあった。

 

左翼のメンバーたちは無数の小さなグループに分かれており、それぞれが自分たちの理想と信じるもののために活動していた。しかし、その活動は無秩序であり、統一された目標や組織のない彼らは、まるで進むべき道を見失った船のように漂流していた。

 

タイチはその中に身を置きながら、彼らの思想、行動、そして内部の状況をじっくりと観察した。彼は彼らが何を求め、どのように行動しているのかを理解することで、自分の役割を果たそうとしていた。

 

彼の目には、左翼の人々の情熱と誤解、そしてその狂気が映し出されていた。しかし、彼はそれを全て受け入れ、その中に潜り込んでいった。それが彼の仕事であり、そしてその仕事がこの混沌とした戦争の終結につながることを、彼は確信していた。

 

そして、彼は旅路へと進んでいく事となった。

 

エンドカード

エンドカード

px.a8.net